2005.07.03 (株)オスカーインターナショナル 代表取締役 高橋則幸氏インタビュー
2004.01.13 ハーマンインターナショナル(株) 営業本部 カー営業部 堀部公史氏インタビュー
2003.10.25 (株)エイ・ディー・エス・テクノロジーズ・ジャパン 最高技術責任者 石田稔明氏
2003.10.25 東北パイオニア(株)スピーカー技術部 開発技術部 開発技術課 兼平智也氏
2003.10.25 ビーウィズ(株)代表取締役 中島敏晴氏
(株)オスカーインターナショナル 代表取締役 高橋則幸氏インタビュー

取材日:2005.7.3 インタビュアー:石井聖一
−まず初の自社ブランドとなったQrinoについてお伺いします。"Qrino"とはどういう意味なのでしょう?

 これは一番難しい質問ですねえ。
まず、いろんな部分で馴染みのない言葉を作ろうと思ったのです。
基本的に日本語でもなく英語でもない、イタリア語、フランス語でもない、そういうまったくない造語を作ろうというところから始まったんです。
Qrinoというのは素材コードから名付けたんですが、完全な造語として思ってもらったほうが良いかもしれませんね。
ブランドロゴもそうですけど、10年20年見ても飽きない、飾らないひとつのブランドの形であったりだとか、年々つき合いが深くなるにしたがって味が出るといった意味合いも含めたものにしています。

−長く馴染めるようなブランドにしたいということですね。

 そうですね。
やっぱり新しくゼロから作るというのが前提にあったので、今までにあったものを継承するといったものではないということです。

−この製品はハイエンドクラスのユーザーをターゲットとされているのでしょうか?

 そうですね、まずベリリウムスピーカーという部分を一番PRしていきたかったのですけど、Qrinoというもの自体は形を持たないようにしたいと思っています。ハイエンドを狙っていきたいとは思っているんですが、最前のテーマというのは会社ぐるみで遊びをやりたいと。
世の中にないものを中心に、楽しくなる製品を開発していきたいという感じです。
ですからオールQrinoで製品を作ったりという、Qrinoとはこういうブランドだと一角だけで決めるのではなく、色々な新しいものに挑戦していきたいとは思っています。

−門戸を広げてユーザーにアピールしていきたいということですね。

 ハイエンドだけではなく、極端な話CDソフトを作ってみたり、チューブアンプを作ったりといった、多方面から楽しくなる製品を作っていきたいですね。

−ひとつの製品に限らず広く展開していくということですね。
では、Qrinoはクラシックやポップなど、さまざまなジャンルを聴くユーザーを対象としているということでしょうか?


 ホームオーディオではクラシック向き、ジャズ向きといった製品がよくあると思うんですが、各ジャンルによって録音が偏ってくるとか方向性があったりするので、そ れぞれ求めるものが違うというのが当然あります。だから、やはりジャズ向けとかクラシック向けとか言われちゃうんですよね。
基本的に求めていきたいものは楽しくなるものなんです。
録音環境やソフトが違っても、極力自然の音というのが絶対条件です。その中で楽しくなる音というのをQrinoで求めていきたいと思ってます。

−どんな音楽でも楽しく聴けるような製品ということですね。

 そうですね。要は楽しく音楽が聴けるというのがひとつの具体的なテーマですね。

−ところで、現在御社が扱われているMBクォートとの棲み分けはどのようになっているのでしょう?

 輸入インポーターという立場でメーカーを作るというのは失礼な話だという考えがあって、じつは5年ぐらい悩んでいたんです。
ただ、やりたいなというのは昔からあって。
 MBクォートというドイツのブランドは、とにかく底辺層を作っていくのがうまいんですが、その与えられた製品をマーケットの中でどのように光を当てていくか、商品をどういう風に伝えていくかというのが輸入インポーターの仕事なんです。
それに対してQrinoはマーケットにないものを創造していくというのをテーマにしています。

−ではMBクォートはインポートしてそれをユーザーに広めていく、それに対してQrinoは今までにない部分に光を当てて開拓していくということですね。

 そうです。一部ラップしないところがないわけではないんですが。
これまで自分達が扱ってないものであったり、こんなものがあったら良いなという製品を中心に展開していくのがQrinoというブランドだと思っています。
ですから、逆に製品に一貫性がないと言われるかもしれませんが。
一番のテーマは「大人の遊び」なんです。いかに大人として遊べるか、オーディオとして楽しく遊べるかというのがQrinoの最大とテーマだと思ってます。

−ではどちらがローエンドという風に定めてはいないということですね。

 そうです。Qrino自体もハイエンドもあれば普及帯というのも作っていくと思いますし。防振キットも考えています。
将来的な話ですが、自分達でプロデュースして海外のレーベル会社と提携してCDも作ってみたいです。ひとつの形に拘ることはしたくないですね。

Qrinoは振動板にベリリウムを採用したスピーカーですが、この材質に行き着くまでどのような経緯があったのでしょう?

 一番最初の発想からいくと7年ぐらい経っているんですよ。
当時は「ベリリウムはまったく無理」という部分がありまして、振動板は何が良いのかずっとやっていたのです。
ミッドウーファーを作るのに検知点を出してスピーカーの環境に対してアンプにフィードバックを返して、もう一度暗算したものをアンプに入れるという帰還回路を作って、常にウーファーの正確な音を作るという発想をしていたんです。
それをどんどん突き詰めていくとトゥイーターに行き着くんですね、最後は。
そうすると、結局ミッドにそういうことをしても、トゥイーターに合うものがなければダメなんですね。で、ミッドからの開発はあきらめてトゥイーターから良い製品を作ろうと。
トゥイーターで良いものを作るというのは構造ではないんですね。トゥイーターは意外とローテクなものですから。
振動板が動いて音を作るという共振の振動をより正確に出していこうとすると、素材に当たっちゃったんですね。
そのあたりで1ランク開発の仕方が変わったんですけど。
セラミック振動板などいくつかの素材から長い年月を経て辿り着いたのが、このベリリウムという形になったわけです。
これも現段階で一番良いと思っているだけで、次の時代にはもっと良いものができるかもしれません。技術って日進月歩ですし。
もしかすると地球の環境問題とかの関係で、今できても将来できないものが出てくるかもしれません。
ですから、今現在できる中でのベストを尽くした物作りですね。

−カタログではベリリウム振動板は非常に薄く軽いということを謳っていますが、薄く軽いことでどのようなメリットが生まれるのでしょう?

 トゥイーターってだいたいソフトドームとハードドームに分かれますよね。
ハードドームを支持するユーザーの最大の理由は高域が出るからなんですね。
硬い振動板であるから共振周波数が上がるので高い音が出るんですね。
それに対してソフトドームはシルクやフィルム系を使いますよね。
これによって高い音は出にくいんです。
そのかわり最大のメリットは軽いってことなんです。
軽いから追従性も良いし、ローを入れても結構鳴っちゃうと。軽さと柔らかさというのがソフトのひとつの特徴なんです。
ベリリウムというのはハードドームでは一番硬いといわれる素材なんですけど、その最大の特徴に薄くできる、ヤング率というのが大変高くできるんです。
薄くできるイコール軽さなんです。
ですから、ソフトドームトゥイーター並に軽くできてハードで一番硬い。
いわば理想の素材というのがベリリウムの謳い文句のひとつです。
ソフトとハードの最も良いところを取っちゃうというのがベリリウムです。

−カタログによれば定格入力値がツィータは3W、ミッドウーファは26Wと他社製品に比べるとかなり低いですよね。

 これは裸の状態での測定方法で、色々な方法があるんです。
で、この測定はフルレンジなんですよ。トゥイーターにフルレンジをぶち込むユーザーはいないと思いますよ。
基本的にはあのカタログの書き方は正しくないんですね。
パッシブ上の特性を書いちゃうと、セットの項目としてなら出せるんです。
例えば測定する段階において4KHzハイでどれだけ入るかといったら、定格で25W以上入るんですよ。
ですから壊れることはないんです。

−では常識的にローパス/ハイパスを切ってやれば飛ぶようなことはないと。

 はい。ですから普通のトゥイーターと同じです。
表示の仕方がちょっと悪かったのか真面目すぎたのか。書き方の問題だけです。

Qrinoは非常に繊細で割れる可能性もあるということなんですが、カーオーディオは使用環境が厳しいですよね。Qrinoにとっては不利ではないですか?

 これは脅しでかなり強く言いました。Qrinoに関してはどこまで拘れるか徹底的にやろうということで。
うちがやっているMBクォートはチタニウムを使ってるんですが、チタニウムは手荒く扱っても、凹むことはあっても割れることはないんです。
これがハードドームトゥイーターの常識なんですが、ベリリウムの場合は割れちゃいます。

−分子結合の数が他の金属より少ないので割れやすいという話を聞いたのですが。

 そうですね、やはり堅さというものの裏腹には脆さというのも当然あるんですが、それ自体は大きな問題ではなくて(苦笑)。
要はインストールする、商品を扱う、そういった中でカーオーディオは物を大事にしないというのが結構ありますので、戒めをふまえてかなり強く言ってます。
要は「大事に使って下さい」という意味です。
で、今のところ割ったというお客さんはいらっしゃいません。

−触ったり蹴ったりということがなければ大丈夫なんですね。

 ええ。特に触らないほうが良いです。
この業界では爪でコーン紙をカンカンってやる方がいるんですが、オーディオの製品を扱う人間として本来はあり得ないんです。
爪ではなくコーン紙を指の腹で押し込んでいくのは許される話なんですが、ましてやトゥイーターを叩く方もいらっしゃいますからね。
Qrinoは凹まずに割れちゃいますから、これを徹底させるためには脅すしかないだろうと。
 それから、Qrinoはペアで売っているものに関してはカップリングをとっています。
左右それぞれの特性をとって、セット組みする時に極力特性の近いものをカップリングするという、大変手間のかかることをやってます。
ですから一個壊れると、できるだけ特性の近いものを選ぶか、もしくは新しいペアを買うと、より最初の音に近づきます。
ですが、それを上手く伝えていかないとクレームになっちゃいますね。
こちらの努力が逆にクレームになってしまうのは困りますんで。じゃ最初から謳っちゃおうということで、かなり強めに書いたんですよね。
ただ、これは時間とともに解決する問題だと思うんです。
最初は怖いなあ、とみんな思うんですけど、一回付けてみて大丈夫だったというのが徐々に広まっていて。
普通に使えば大丈夫だと今は皆さん思ってきてるんじゃないでしょうか。

−7月2日のアサヒコムでは「ベリリウムは、金属元素の一つで、原子炉などで中性子の反射材として使われている。化合物は有毒で、体内に入ると中毒を起こし、発がん性も指摘されている」と掲載されていたのですが、切削加工や自動車事故が原因で使用者に害をなすようなことはあり得るんでしょうか。

 基本的には弊社でもすべてのデータはとりました。
結論からいくと、完成品においての毒性を再現するということがあるとすると、車が炎上してスピーカーが燃えて2000度になってはじめて気化します。
気化する時に気化したベリリウムが人体に入った場合に有害性が出ます。
ですからこれは工業製品と考えれば無視して良いレベルかなと思ってます。
毒性がゼロではないということに関しては、突っ込まれるとちょっと難しいんですよ。

−御社の方から「生産する際も焼きを入れる時に気化して発生する有害性物質を処理する施設が日本にはないので、国内でなかなか作れない」という話を伺いました。

 そうですね。
日本で作れないことはないんですけどね。事実パイオニアさんなんかは作っておられますから。
プラントもそうですけど、やはり工場自体が働いている工員さんに対して、どこまでちゃんとした設備が整えられるか、という部分が商品のできる・できないという最大 のポイントになるんです。
で、弊社の提携工場は三年かかってこれをやってます。ですから設備的には問題ないレベルに行っています。

−通常のペーパーコーンやメタルコーンを生産するのに較べると設備としてはずっと大変なんですね。

 大変ですよね。
高圧で圧縮して型押ししていくんですが、20cmクラスになってくると製造の工程をふまえても、一時間でできる量はものすごく少数なんですよ。
ですから生産コストが跳ね上がっていく原因はそこにありますね。
うちの商品で20cmは一時間に二本ぐらいしかできないですよ。

−最近フォーカルも新製品をリリースしましたが、こちらもベリリウムを採用していますよね。それと較べてQrinoはどのような違いがあ るんでしょう?

 ホームオーディオではGrande Utopiaというのは大変有名だったし、あそこの音は素晴らしいものがありますね。
ベリリウムを使用した製品で一番目に付くのはホームではやはりJMラボとパイオニアのTADでしょう。
その中で一部のメーカーがカーオーディオに参入してきたという形なので、比較対象になるのはごく当然ですよね。
ですが、何がどう違うかというのは実に難しいんです。
たとえば振動板が同じだから同じ音が出るかといったら、これは違いますよね。
ペーパーコーンだったらみんな同じかといったら違うし、ポリプロピレンもそうです。
だから単に振動板が同系統の素材を使っています、ということにすぎないんですけどね。
ただ強いて言うならば、うちのコンセプトというのはフルベリリウムなんですよ。
トゥイーター・ミッドウーファーすべてがベリリウムだと。これは冒頭にお話ししたとおりミッドから開発したんですが、どうしても最終的にはトゥイーターっていう部分で、良いミッドができても合うトゥイーターが用意できなかったんです。
倍音の理屈の中で高い周波数にシンクロしていく理論がありますよね。
どうしても最終的にはトゥイーターに音階が乗っかっていくという部分を考えていった時に、トゥイーターから開発に入ったという背景の中で、トゥイーターをどうやって活かすかというのが最初のテーマだったんです。
そこでうちが結論を出したのは同一素材、同じ素材の中で音色を合わせていくという感覚なんですね。

−ということはフルベリリウムで上から下まで音色を統一できるというのが他社製品との一番の差ということですね。

 そうですね。
それとペーパーコーンのウーファーに仮にチタンのトゥイーターを合わせるとなると、チタンの共振周波数とペーパーの鳴きって違いますよ。
違う音色同士をひとつの音にシンクロさせていくためには努力が要りますよね。
取り付けの角度もそうでしょうし、適切なレベルやパッシブの構成もそうでしょう。
音色が違うもの同士を一個にするということ自体は難しさがありますよ。その点やっぱり同一素材というのは有効に働きますね。

−なるほど。Qrino開発にあたって、事前に比較対象された他社製品はあったりするんですか?

 一番気にしたのはMBクォートですね、当然ながら(笑)。やっぱりMBクォートは一番大切にしてたブランドなんで。
その中で核にあるのがワイドレンジ再生なんですね。
帯域周波数を横に広く確保しながらバランスをとっていくと。そういったユニットの開発というのが絶対条件でしたので。
周波数帯域をより広く再生できるものである必要がありました。

−ということはライバルは一番近くにいたわけですね。Qrinoを使用する際に、御社が推奨されているシステムはアナログ・デジタルのどちらでしょう?

 基本的には両方なんですよ。製品を開発する際に一番気をつけたのは「スピーカー自体がマルチで使えること」ということでした。
これが最初の出発点だったんですね。
極端な話、フルレンジのミッドとウーファーを作ろう、というぐらいの発想だったんです。
そこにトゥイーターを乗っけるだけと。
で、結局パッシブというのはその中でメーカーの音を作っていくというものですね。
ユニットメーカーとエンクロージャーメーカーというのは別に存在すると思ってますから。
ですからユニットメーカーとしては絶対マルチで使える音、フルレンジに近く鳴らせることができるというぐらいの意気込みでやってます。
あと、パッシブを使ってフロントドアを加工して箱にしていくというショップさんの仕事がありますよね。
これに関しては極力自由性のあるようなパッシブをリーズナブルな金額で付属させるのを一番に考えました。

−先日開催されたMESでQrinoの16cmバージョンを発表されましたね。これは販売店やユーザーからの要望があったということでしょうか?

 そうです。うちと提携しているラインの関係上、ベリリウムの最大口径は20cmしかできないんです。
20cm以上のベリリウム振動板を作るというのはまず不可能だろうという風に結論づけてます。
だから20cmのウーファーを核に考えると、13cmのミッド、そして25mmのトゥイーター、これがベストマッチであるという風に思ってたんですけどね。
やはりマーケットのニーズからすれば、あまりウーファーを使わない、フロント完結で考えているユーザーが大変増加しています。
特にサブウーファーレスのシステムというのは相当多く出てきています。
その中でフロント完結2Wayというコンセプトで今16cmの開発を急ピッチでやってます。
今後出てくる16cmと現存する13cmは個性がまったく違うもの、という感覚です。

−では最初から構想に入っていたものではなかったんですね。

 ないですね。ですから13と16というのは単にシリーズという感覚ではなくて、まったく別カテゴリーの企画商品ぐらいの気持ちでやろうとしてます。
これはこれでまた違う世界があっておもしろいかもしれません。

−では、先程話にもありましたが、現在予定されている今後の製品展開というのはCDとかそういったものでしょうか。

 それはもっと将来的ですね(笑)。

−ではこの後というのは?

 年内であれば16cmがまず一番最初にお披露目できると思います。じゃあ16cmが出ることによってドアの防振はどうするのか。
(スピーカーユニットだけで)フロント完結という言葉を使うことすら怖いですね。
フロントはドアの防振もふまえて16cmが上手く鳴るのかというのが一番の問題だと思うんで、うちの提案できるQrinoブランドの防振キットを出してみたいなと 思ってます。これも年内に出したいなと思っている商品です。

−オリジナル製品でしょうか。

 そうです。防振キットだからオリジナルといえばオリジナルですし(笑)。たとえば一部ダイポルギーさんの製品も使っていきますので。

−では現在ある素材メーカーの一部と協力しながら作っていくと。

 ただ、変わったコンセプトとして防振材を使わない防振キットというのを考えてます。

−まだ内緒ですか?

 半分内緒(笑)。
簡単に言うと、防振材は使えば使うほど防振材の中に振動がプールされていくんですね。
そのプールされた振動が次の振動と干渉して別の振動を作るんです。
現在開発されている防振材を極力使いたくない、という考え方をしてます。
鉄板の伝播速度は空中の伝播速度より速いんですね。
ですから鉄板の伝播速度を活かすという感覚の防振キットを考えてます。

Qrinoブランドのアンプも考えてらっしゃるんですか?

 Qrinoブランドのアンプはいちおう受注生産で変なのがあるんですが(苦笑)。

−真空管のがありましたね(笑)。

 あれは僕らの遊びのテーマの中のひとつのカテゴリーだと思ってます。

−ソリッドステートは今のところ考えていないと。

 ええ、パワーアンプでは考えてません。

−フロント3Wayというのも考えているんですか。

 16cmを出すということで、フロント完結システムって定義づけしちゃってますので、やはりフロント3Wayというのは必要条件だろうと。
サブウーファーは付けないけど16cmとスコーカーとトゥイーターで完結するということに対する回答は出したいと思ってます。
ただ今年は無理でしょうね。来年じゃないかなあ。
いちおう試作は作ってみたんですが、やはりどうしてもいろんな問題があって、自分が納得できるにはもう少し時間がかかるかな。

−では最後の質問ですが、最近マーケットでは小口径スピーカーシステムがひとつの選択肢として定着した感がありますが、こういったカー用小口径スピーカーをどのようにお感じになりますか?

 もともとQrinoの前身は小型スピーカーだったんです。
しかもマグネット裏1cmという特殊なシールドボックスを作ろうとしていたんです。
それに検知線を入れてフィードバックをかけるということをやろうとしていたんですけど。
やはり何かを犠牲にして何かをするんですよ。
スピーカーというのは基本的にハイテクではないですから、どちらかに振ればどちらかに偏ってしまう。
ワンオフ的な発想になってきてしまいますので、ニュートラルに色々な音楽に合わせるというを考えていくと、プレーンというかいかにゆったりと鳴らしていくか、最終的には今のカーオーディオの中ではもっとも社会性があるだろうという判断をしてます。
 小型スピーカーを作ろうとすると、必然的にシールドエンクロージャーでは厳しくなってくるのでバスレフになっちゃうんです。
バスレフになってくると当然エネルギーバランスの問題であったり、ポートから出る周波数というのも反転するわけですから、機密性の高い車の環境に合わせても音作りができると考えていくと、どうしてもこの音楽、この音量、このシチュエーションという風には適したものは作れるんですが。

−それに合わせて箱を作っていくならともかく、ひとつの決まった箱で鳴らすのは無理があると。

 うちも開発をやっていましたから否定はしません。
将来的にはわかりませんが、いまの段階ではカーオーディオではまだフリーエアのほうが可能性があると思うんです。
防振技術もふまえてすべてが完成形ではないと。
まあ、ウーファーだけの開発では完成しなかったんですね。
ミッドが完成していればそういう結論が出せたかもしれませんが。
当時うちではミッドが完成形ではなかったし、トゥイーターのところで躓いちゃったんで。
ミッドの開発をそれ以上進めるのをやめたんです。
あまり話さないほうが良いですね(苦笑)。

−(笑)。では制振や防振も含めてフリーエアで可能性を追求していくと。

 13cm・16cmはフリーエア、サブウーファーは当然シールドで設定してます。
次に出すであろう7.7cmミッドはシールドです。ケースバイケースですよね。
一般的に言われるフロントミッドは13か16ですが、これに関しては基本的にフリーエアです。

Qrinoが製品化される際のマッチングテストはヘッドユニットは何を使われたのでしょう?

 えーと、これは基本的にあまり考えてません。
良いヘッドユニットが出れば、よりクオリティが上がっていきます。
アンプのマッチングはあるかもしれませんが、ヘッドユニットはオールマイティに考えてます。
情報伝達はCDやMDといったソース選ぶようなことは考えてないです。ただ、これからの時代はどんどんワイドレンジになっていきますね。
ハイビット・ハイサンプリングということで、うちのコンセプトもワイドレンジということで、ワイドスピーカーの中では最も勝っていると思ってます。

−アンプのマッチングというのはどの製品とされたのでしょうか。

 パッシブを作る時にやったぐらいですね。
ユニットを設計する時はすべてに対して有効であるという状態を想定してますので。
ひとつふたつのアンプに対するマッチングとか相性テストはやってます。
パッシブで入れて音出しで決めていくという時には何を実験したのか決まってきますね。
パッシブを作る時でも一番ニュートラルにいくように決めてます。
何と何でやったというのが大事ではなくて、どれだけ多くのシステムにさりげなく溶け込んでいくか。
スピーカーの構成だけが勝ってしまってもシステムって駄目ですから。
トータルの中でいかにユニゾンしていくかというのが大事ですね。

−お答えづらい質問に快くお答えいただきありがとうございました。今後も楽しみにしております。ありがとうございました。
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ハーマンインターナショナル(株) 営業本部 カー営業部 堀部公史氏インタビュー

取材日:2004.1.13 インタビュアー:石井聖一
−最近新型のアンプ(PX・BPXシリーズ)を市場に投入されましたが、エンドユーザーの反応はいかがですか?

 おかげさまで非常に良いですね。
2CH・4CH・モノブロック3種類の計5機種を発売致しましたが、時代的に4CHが圧倒的に売れるだろうとの予想の通り、4CHは好調に推移しています。
しかし意外にも2CHや、ゴーイングさんでも使っていただいたモノアンプBPXが予想以上の反響で驚いています(笑)

−JBLは製品サイクルが他社に比べると長いように感じられるのですが、何か理由があるんでしょうか。

 うーん、いわゆる車でいうところのモデルサイクルが長いという事と一緒かなと思いますが、JBLは、発売する製品を大事に育てて売っていこうとする風潮が非常に強いんですね。
代表的な例として、ホーム用でスタジオモニター4312という昔から続いているスピーカーがあります。
最初は4310という型番から始まり、4311、4312、4312MK2とマイナーチェンジを重ね、30年以上も続いている超ロングラン製品で、現在もJBLの代表的なモデルとして生産を続けています。

−ホーム・カーの区別なくロングスパンで考えているということですね。
GTiシリーズをはじめとして、他社製品に較べて販売価格の割に製品コストがかかっているというか、割安感を感じるような気がするのですが。
また、本国との価格差も他社製品に比べると抑えられているとも伺っております。それはどうやって実現されているのでしょうか?


 それは私達が"ただのインポーター"ではなく、米国ハーマンインターナショナル社が100%母体の会社だからです。
つまり、販売部門と開発/生産部門が別の会社ではなく親子関係が成り立っているからです。
また価格だけではなく、アフターフォローやサービスの充実や社内に技術者がいるとか、製品保証が2年であるなど、「私達が特にアドバンテージとしているところ」も同様にバックボーンがある強みといえるでしょう。
かなり昔のモデルまで、いまだにコーン紙を持っていて貼り替えができてしまうとか、部材の供給が安定している面などもただの輸入元ではできないことですね。

−JBLはホーム用製品とカー用製品が密接に関わっているメーカーだと感じているのですが、カー用製品の開発にあたってどのようなアレンジが加えられているのでしょうか?


 やはり最優先は音ですよね。あとは使途とか。
例えばウーファー。エンクロージャーに入った完成品の一部分としてのウーファーというホームの扱いに対して、カーでいえばサブウーファーのように別筐体になる場合が多いじゃないですか。別体で置くという流れの中でウーファーをどういう位置付けにするか・・。
 W15GTiというカー用のウーファーユニットがありますけど、あれは上の周波数レンジが1KHzまでキチンと再生できるというスペックになっています。しかしホーム用の15インチのウーファーで1KHzまで出すシステムってないですよね。そういう意味では音のチューニングは完全に変えています。
又、耐候・耐熱・耐湿度、あとは安全性を十分加味して使用環境が違うことで素材も見直しています。

−JBLのスピーカー・アンプについて、他社製品と比較するとどのような点が優れているのでしょうか?

 これは私見ですが、やはりコストパフォーマンスの高さですね。
先程もお話した通り、私達は米国ハーマンインターナショナル社が100%母体の企業であり、流通経費を最低限に抑えられます。結果、日本で販売するにあたり非常に高いコストパフォーマンスが可能になります。
 あとJBLというブランドはカーだけでなく、スピーカーと名の付くところは全て製品ラインアップとして持っている事も大きなアドバンテージの一つです。
コンサートでまずプレイヤーが奏でるギターアンプのスピーカーがあり、それをマイクで集音、増幅した音をオーディエンスに届ける為、今回のエリック・クラプトンのワールドツアーでも使用していた様なPAスピーカーがあります。レコーディングでは、モニタースピーカーを使用しミキシングされた音源がプレスされ、リスナーはカーやホーム用のスピーカーでその音を楽しむという流れの中で使われるスピーカーは、プロ用やコンシューマ用問わずに全てラインアップしています。
つまり、音質はもちろんですが、JBLは「いかに音楽を楽しく再生させるか」というところにかなり重点を置いているブランドです。スピーカー自身が「こういう風に聴きなさい」と主張してくる数少ないブランドだということですね。

−それだけ多くの再生スピーカーに携わっているだけあって、音楽の鳴らし方がわかっているということですね。

 そうですね。
個人的にオーディオとは、"再生装置"にすぎないと思うのですが、JBLは再生するだけではなくて、プレイヤー側の生音(なまおと)を再生するスピーカーも開発生産しているところが、すごく強いところだと思っています。

−他社では現在ブランドのリファレンスとなる最高級モデルが多数リリースされています。JBLではこのような製品について、どう感じられているのでしょうか。上級モデルをリリースされる予定はあるのでしょうか。

 JBLにもその様なカーオーディオ用高額スピーカーがラインアップされてもいいのではないかと思ってはいますが、私達が担うべき位置というのはそれだけではないと考えています。
 先程も申し上げた通り、JBL はコストパフォーマンスの高さが売りのひとつです。
75,000円のC608GTiというスピーカーを手にとって、「これが75,000円なんだ!」とみなさんに驚いていただける自信は非常に強く持っています。

−これで十分他社のリファレンスと渡り合えると。


 と思ってます。
あとはスピーカーそのものの音色の傾向というか、各々の好みもあると思いますので。
カタログスペック的な部分を追いかけたいという方であれば、そちらをチョイスすれば良いでしょうし。
JBLは、"音楽再生"というところにかなり力が入っています。「音楽を楽しく、JBLらしく奏でる」という意味では、カー用においてGTiというユニットは非常に良くできていると思います。
もちろん高額製品があれば商売的には楽なんですけど(笑)。

−上級機種のGTiシリーズがある反面、低価格なP・PSシリーズもありますが、ユーザーの棲み分けはどのように考えられていますか?


 JBLというブランドは一回使っていただくと、他メーカに浮気をされない方がほとんどです。
PSはフレームを見ていただければわかるように国産車向けのエントリーモデルです。
現行のPシリーズも全世界的に見たところのエントリーモデルとですので、車そのもののベクトルが異なるだけで、初めてのJBLという位置づけとしては両シリーズとも同じなんです。
 どんな方でも長いこと同じ製品を使っているとどうしても飽きてきますよね。その時に他社製品に買い換えるのではなく、もう少し高いJBLに買い換えるユーザーの方が圧倒的に多いんです。
そういう意味ではP・PSシリーズはJBLが考えるカーオーディオの入り口ですね。
P・PSもコストパフォーマンスは非常に高いので、このくらいの値段のスピーカーでも、キチンとしたお店でキチンとした取り付けをすると、こんなにも気持ちよい音がしちゃうんだと。
 あまり難しく考えないで、もっと簡単にカーオーディオの世界に入ってきて下さいとユーザーの方に呼びかけていきたいと思っています。

−開発・販売に際して比較対象にしている製品はありますか?

正直、開発に関してはありませんね。

−では技術畑で開発された製品を売るトップダウンという形で、現場で他製品を比較してリクエストを出して製品化するということはないでしょうか。

 それは両方あります。
こういうのを作ってくれというリクエストは実は見えないところで、いつも行っています。

−では仮想敵になるような製品はあるんでしょうか?

 非常に難しいんですけど、一番重要な音の面では他社とは較べている製品はありません。
ただ取付性ですとか、見た目の美しさだとか、マテリアル的な部分に関しては「これを見てくれ、あれを見てくれ」と言ってます。薄いウーファーが欲しい、小口径ユニットが欲しい、例えばこの製品、というように。
逆に言うと、それを具現化してもらったとしても音色が変わっちゃうようだったらいらない、というのが僕らの本音ですね。
つまり、キチンとJBLの音色を保ち、取付けの利便性はもうちょっとこの辺の製品を参考にして下さい、というような類のリクエストが多いですね。
 他社製品は「気にしてないし、気にしている」というのが本音ですかね。

−最近他社メーカーが小口径スピーカーを開発・発売していますが、こういったカー用小口径スピーカーについてどのようにお感じになられますか?

 JBLでは旧タイプのGTiシリーズで4インチミッドレンジがありましたし、同じく旧タイプのPシリーズでは3インチのフルレンジがありました。実は小口径ユニットは、過去に大分リリースしているんですよね。
 他社が流行らす前から相当やっているので、その重要性というのは理解しているつもりなんですが、実際のところ、現在のマーケットで小口径ユニットをどういう風に使うかという、システム全体のことを考えると、やはりフルレンジではなくミッドレンジとして使っていただきたいというのが私達の意向としてあるわけです。
 でも例えば4インチのミッドレンジを使ったら絶対トゥイーターと4インチミッドと、下手をすれば6インチのミッドバスと15インチサブウーファーで4ウェイ、なんていう大掛かりなシステムになってしまうじゃないですか。
それよりは今現行で出ているシリーズで、もう少し簡単にシンプルに、カーオーディオの世界に入ってきて頂きたいと思っています。
最近のシステム構成はシンプルな傾向になってきていますので、中抜けの問題を解決して開発されたC608GTiなどを使えば、現行の2ウェイのラインナップでも十分満足できると思います。
しかし先程のお話の通り、一回JBLを買って入ってきた方がグレードアップをしていく中で、どんどん追い込もうということになると小口径のユニットが必要になってくる事もわかっています。

−小口径ミッド(フルレンジ)とトゥイーターで完結する他社のユニットもありますよね。

 いまのところハーマンジャパンの営業としては、そういう使途は考えていないですね。
やっぱり今までJBLを使ってきていただいたユーザーの方がグレードアップするにあたって、こういうものが欲しい、というものをどんどん出していきたいと思っています。
ですから608GTiの間に4インチや3インチを入れちゃうのもおもしろいかな、と思いますしね。
 もちろん取付位置を考えれば小口径のメリットは非常にあるので、小口径でたっぷり下が出てレンジが広いというユニットがあればそれが一番良いんですけど、物理的にそれは無理ですよね。
 私達はやっぱりショップさんあってのメーカーですから、ショップさんの味付けでJBLがこういう風に鳴ってます、というのも僕らはある意味楽しんでやらせてもらってます。
ですので、いまのところカー用で、始めからエンクロージャーにユニットが入っていて、ただ付けてしまえばOKというものは、予定はしていません。

−なるほど。知り合いにJBLのホーム用ユニットを箱ごと車に付けている人もいますけど(笑)。

 私達はユニットメーカーですから、そういうのもありだとは思いますね。
もちろん使途が違うので保証ができるできないでいえば、ぶっちゃけできませんが(笑)
ホームのProject K2 S9800を発表する際、JBLエンジニアから「まず良いユニットありき」だという発言がありました。これは「JBLというブランドはまずユニットメーカーである」という原点に、ここ数年で帰ってきている証です。
良いユニットをキチンとしたエンクロージャーに入れて、キチンと鳴らす、というのが今の幹になる考え方ですね。
 それはカーでもまったく一緒で、せっかく良い技術者がいて良いユニットが出たのだから、なんとかそれをカー用に流用できないかとか。逆にカーで良いユニットができたのでホームやプロで使えないかとか。
実は、もう相当昔からカー、ホーム、プロの間には積極的な行き来があって、例えば前の500GTiというミッドレンジはCENTURY GOLDというホーム用スピーカーのミッドレンジとして使われていました。

−JBLのアンプ・スピーカーは他社製ユニットとのマッチングテストは行っているのでしょうか?

 本国では行っています。
ただしハーマンジャパンではいまのところやってないですね。
 ただ、おかげさまで良いショップさんがありますので、展示に入れさせていただければそこで必然的にテストができてしまいます。私達はそれで製品のキャラクターを掴んでいます。
現行のPXシリーズアンプが予想以上に売れているのは、JBL以外のスピーカーと合わせてもかなりおもしろいキャラクターを発揮するからだと思います。

−これまで携わってこられたカーオーディオ製品で、「これは最高傑作だ」と思われた製品はありますか?


 個人的に過去の製品で好きだったのは、旧モデルになりますが500GTiおよび400GTiですね。非常にJBLらしい音色を奏でるということと、レンジも狭いし美味しいところもすごく狭いのですが中域再生の癖が強く、すごくJBLらしい鳴り方をするユニットでしたから。
 昔からJBLが"中域命"でやってきているのは、音楽を音楽らしく奏でる一番重要な部分だからと思うんですよね。

−他社製品を含めて、現在販売されているカーオーディオ製品の中で、ご自分で使ってみたい製品、気になる製品はありますか?


 男らしく言いますが、所有してみたいというユニットは残念ながらないですね(笑)。JBLがよろしいと本当にそう思います。
 著名なオーディオ評論家の方々の中にも大勢いらっしゃいますが、JBLはある意味怖いブランドで、取り憑かれてしまうと他のブランドに行けなくなってしまう事が多いのですよ。
 スピーカーに関しては某メーカーの口径的に小さいヤツとか興味はありましたが、やはり買って所有して自分で付けてみようという気にはならないですね。

−なるほど。では最後に堀部さんにとって理想のカーオーディオとはどのようなものなのでしょうか?

 まず、車そのものの機能を犠牲にしないことですね、私の中のカーオーディオというこだわりでは。
こういう仕事に携わっているので、いくらでもHi-Fiの音を聴く機会がありますから、その上で私が聴いて"普通の音だ"と思えるシステムですね。
 スペース的なこともあって自分の車で15インチのウーファーを積むことはできないので、ホーム用スピーカーのようなタップリした低域が出ないのは物理的にしょうがないと割り切った上で、楽しく音楽を聴きたい。音を聴くんじゃなくて好きな音楽を気持ちよく聴いていたい。
そういう意味ではホームもカーも一緒かもしれないですね。
なおかつ車の中ですからボリュームが上げられて、家で爆音再生ができない分、気持ちよく聴きたいなあ、というのが本音ですね。

−「好きな音楽を気持ちよく聴きたい」というのは簡単そうでけっこう難しいですね。

 一番究極かもしれないですね。
その気持ち良い音を目指してマルチウェイやマルチシステムにする方が多いですが、どこで割り切るかという問題になるのかもしれないですけど。
 必要最小限のシステムで、そのシステムが持つ最大限の力を出して欲しい。かつ車の機能を犠牲にしないというのが一番です。
個人的にはフロント2ウェイのマルチというのを一番やりたいですね。そこで究極のところまで追い込んでみたいです。

−長い時間おつき合いいただき、ありがとうございました。

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(株)エイ・ディー・エス・テクノロジーズ・ジャパン 最高技術責任者 石田稔明氏

取材日:2003.10.25 インタビュアー:石井聖一
−石田さんが手がけられたアンプは、どういった音楽を聴かれる方に使われるとイメージされたのでしょうか?

 電子系の楽器じゃなくて、なるべく自然な感じの録音、つまりアコースティックな楽器ですね。それからボーカルもの。
そういうものを聴いている人に良いんじゃないかと思います。
そうなるとジャンルとしてはジャズかフュージョン、それからポップス系でもそういうのはあるんじゃないかと。あとはクラシックとか。


−自然でアコースティック系というと、ワールドミュージックなどもいかがでしょう。

 ああ、そういうのも合うと思いますよ。

−石田さんの手が入ったアンプとノーマルのアンプ、ご自身では音的に何が一番違うと思われますか?

 やっぱり透明感ですね。歪みの少なさ、それに雰囲気感とかね。行き着くところは雰囲気感だと思うんですけど。
なぜそんなに違ってくるのかというと、色々な回路を通ることによることによって、どうしても不純物が入ってくるわけですね。
それをできる限り音の鮮度を落とすようなものを外し、鮮度を阻害するようなものを阻害しないような部品に換える、というようなことをやっています。

−ではアンプの新規開発やチューニングにあたって、もっとも気を遣われている点というのも"音の透明感"ということなんでしょうか?

 そうですね。そこを重視してます。

−石田さんが開発に携わられた製品の中で、「これは最高傑作」だと思われるものは何でしょう?

 最高傑作というと、ナカミチ時代にやったTD1200とか。あのへんは自分でもすごく感激しましたしね。そのへんになるかなあ。

−石田さんの好みとしては具体的にはどのモデルになるでしょう。

 まあ、どれでも良いんですけど(笑)
2番目にやったTD1200IIというのがあるんですよね。そのへんが一番まとまっているように思います。
ただAUX入力がないとか今風じゃないんで、それを改良してSEとかを出したんですね。

−現在販売されているカーオーディオ製品で、ご自分で使われてみたい製品、気になる製品はありますか。

 他社製品で気になるのは、そうだなあ…。ヘッドでいえばパイオニアさんのXシリーズかなあという感じがしますけど。
音は純粋なアナログとはどうしても違うと思うので、突き詰めて使うと思うかどうかはわかりませんが。
アンプでいったら最上さんのやつとか。僕がやってるやつとどう違うのか、というのはやっぱり気になりますね。

−最近他社メーカーも小口径スピーカーを開発・発売していますが、こういったカー用小口径スピーカーについてどのようにお感じになられますか?

 小口径を使うことによって音源がどんどん小さくなって、周りの状況からあまり影響を受けにくくなるだろうという点は、非常に良いと思います。
小口径スピーカーというのは高域の指向性が良くなるという基本的な特徴がありますから、そういった点でも非常に良い傾向だと思いますね。
ただひとつ懸念すべき点は大きな音量が出せないということでしょう。
どうしても許容入力の点で口径の大きさというのは極端にというか、確実に効いてきます。
その点で不満に感じるところがどうしても出てくるように思います。

−そういったこともあってスピーカーメーカーはエンクロージャーを用いた使用を推奨しているんでしょうか。

 そうですねえ、エンクロージャー入りというのは、ホームオーディオでいえばスピーカーシステムを"完成品"として売っていますよね。
あれに近いというのはあると思いますよ。ただそれも…、うーん(しばし沈黙)。
セミナーでもお話ししようと思っているんですが、ホームオーディオとカーオーディオで何が一番違うかというと、完成品としてスピーカーシステムになっているかどうか、そこが一番違うんです。
カーは完成していない"素材のまま"のユニットですから、あとはそれをどう料理するかはカーオーディオショップにかかっているわけです。
まあ一概には言えないですが、カーオーディオショップをあまり信頼しないとすれば、箱に入れたくなるという心情は良くわかります(笑)

−最後に、石田さんにとって理想のカーオーディオとはどんなものなんでしょう?

 やっぱりもう「これで十分」という音量までまったく歪みなく上がるやつですね。これはそう簡単にできないと思います(笑)
何よりもカーオーディオで難しいのは、スピーカーまでの距離が極端に近いということでしょう。
ホームオーディオだったら近いといっても、普通は2mくらいは離れますよね。そこが1mから1m弱。
そうすると粗がたちまち見えてくる。とくに音量を上げるとすぐに出ますね。
そういう環境であっても透明感は無くさないまま、欲しいだけの音量を出せる状態が理想だと考えています。

−お答えづらい質問ばかりで失礼致しました。今後の作品も楽しみにしております。ありがとうございました。
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東北パイオニア(株)スピーカー技術部 開発技術部 開発技術課 兼平智也氏

取材日:2003.10.25 インタビュアー:石井聖一
−いきなりなんですが、13cm2ウェイの発売予定はあるのでしょうか?

 それは私の口からは言えないんです(苦笑)。本社の方で企画してこちらで開発するという形をとっていますので。

−そうなると次の質問もおそらく同じ答えになると思うんですが、17cmウーファーとトゥイーターの間を埋めるスコーカーをリリースされる予定はあるんでしょうか。

 それも本社でGOサインが出れば、ということになりますね。

−なるほど(笑) RSシリーズはフレームの円周部分がシルバーですが、これには音的な意味があるのでしょうか?ツヤ消し黒などではNGだったのでしょうか?

 これは亜鉛を使ったことによるものです。あとでセミナーでもお話しますが、素材自体そのままを出したかったんです。
たとえばホーム用だとユニットの後ろは見えなくなってしまいますが、カー用のユニットはユーザーの方が直接手に取って見ていただける物でもありますので、しっかり作ったわけです。

−RSトゥイーター(TS-T1RS)の大きさはインストールに障害となる、というか取り付けにくいと思うのですが、それは音質最優先という理由によるものでしょうか?

 ご質問のとおりです。ようは外観とか大きさを度外視して音を第一にした結果ということです。

−RSシリーズはどのようなジャンルの音楽を聴くユーザーをターゲットにされたのですか?

 基本的には全体にクラシックからジャズ、J-POPまで幅広く聴いていただきたいという目標がありました。

−特定のジャンルに強いというわけではなく全ジャンルを網羅すると。

 そうです。各ディスクに入っている演奏者の思いを表現してやる、つまりどのジャンルというのはなく、共通に含まれる演奏者の意志といったものを素直に出すことができるスピーカーを目指しています。

−開発にあたって目標とするようなスピーカーはありましたか?

 確かに開発当初は10万円クラスの他社製品も聴きましたが、RSはそこから抜け出して本当の表現、自然な音を出したいというように考えるようになりました。だから最後の詰めている段階では気にならなくなりました。

−開発にあたって他社アンプとのマッチングテストを行ったという話を耳にしたのですが、どれか良い製品はありましたか?

 基本的にはA50とP70を使ったシステムといった自社のホーム用アンプなどで聴きました。その中でみなさんご存知の今話題の有名な他社製品も使いました。
どれが良いというのはなくて、スピーカーがそれぞれの個性を出してしっかり反応してくれる、そういう点ではそれぞれのアンプなりの良さを引き出してくれるスピーカーだと思います。

−最近他社メーカーが小口径スピーカーを開発−発売していますが、こういったカー用小口径スピーカーについてどのようにお感じになられますか?

 まず"取り付け性"なんですよね、小口径のメリットというと。でもRSでは口径は車より大きくなければ良いということだったんで(笑)。

−繰り返しになりますが、取り付けを先に考えるか音を先に考えるかということですね。

 そうです。みなさんに良い素材、スピーカーを提供するという面で音を第1に考えました。

−兼平さんが手がけられたパイオニア製品の中で、これは最高傑作だと思われるものは何でしょう?


 今回スピーカーもハイエンドの領海にやっと出たというのがありますんで…。カー用では今のところRSということになりますね。

−では逆に現在販売されているカーオーディオ製品で、ご自分で使ってみたい製品、気になる製品はありますか。

 みなさんがご存知の有名なスピーカーは、やはり気になりますし、実際購入して解析や試聴は繰り返し行なってきました。

−やはり他社の高級スピーカーは気になりますよね(笑)

 そうですね。価格帯がちょうど同じくらいになりますから(笑)

−では最後に、兼平さんにとって理想のカーオーディオとはどんなものなんでしょう?

 やっぱり、それが小口径か大口径かということによらずに、パッと音が出た瞬間に「おおっ」と感じられるかどうかだと思います。

−聴いた瞬間に自然に驚嘆の声が上がるような音ということですね。

長々とお付き合いくださり、ありがとうございました。
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ビーウィズ(株)代表取締役 中島敏晴氏

取材日:2003.10.25 インタビュアー:石井聖一
−御社はオリジナルのパワーアンプ・スピーカーを企画・設計・開発されていますが、その際にもっとも気を遣われている点は何でしょう?
BEWITHブランドのコンセプトとは?


  一番気にしているのは"車の中で使う"ということでしょうね。それが大前提なので、それに適したものということになります。

具体的には電気を食わない、熱を持たない、小さい、軽い、ということですね。
もちろん"音が良い"というのは当たり前ですね。どのメーカーさんでも同じだと思いますが(笑)

−コンフィデンス・アキュレートスピーカーシリーズ、そしてリファレンスアンプの3グレードをリリースされていますが、3グレードの棲み分けはどのようになっているのでしょうか?

 僕らはハイエンドブランドでありたいので、例えていうならばメルセデスでなくてフェラーリ。
だからリファレンスシリーズは360モデナ、アキュレートシリーズは575マラネロ、コンフィデンスシリーズはエンツォという世界でやっていきたいと思っています。
他社と較べて安いから、イコール悪かろうということはありませんので(笑)
BEWITHというブランド自体を大事にしていきたいと思っています。

−ご自分が手がけられた製品はどういったユーザーを対象にされているのでしょう?どんな音楽を聴くユーザーを対象にしているのでしょうか。

 どういったユーザーというのはないですね。僕達自身が欲張りなので、自分達が欲しいものを作っていくと。
だからどんなお客さん、というよりも"誰が聴いても良い音"というものにしていきたいですね。

−最近他社メーカーも小口径スピーカーを開発・発売していますが、こういったカー用小口径スピーカーについてどのようにお感じになられますか?

 小口径という方向性は間違っていないと思います。まず車に優しいというのは良いことですし。
うちの製品は偏心コーンですから取り付け角度による指向性の問題はクリアされてると思うのですけど、もしシンメトリーというか真ん中にあるのであれば軸上で聴かせたいというのは当然のことなのですが、口径が大きければ大きくなるほど物理的に難しくなりますからね。
ただ、小口径というのはどうしても低域が出にくい傾向にあるので、それはショップの技術もしくはメーカーの指導でどこまで再現できるかということにかかっています。今後ショップがレベルアップしていかなければ小口径は「使えない」ということになるでしょう。

−小口径コーン型ツィーターや偏心コーンといったアイデアは最初からあったのでしょうか。それとも結果的に辿り着いたのでしょうか?

 最初にあったのは音色の統一ということを考えて全部同じ素材・構造で揃えたかったということです。だから、何でみんなはドームトゥイーターに疑問を感じないんだろうと思っていました。
そのきっかけになったのはホーントゥイーターなんです。CRYSTALのホーントゥイーターで初めてクロスを800Hz付近まで下げられた、そのときの感動。
人間が一番敏感な帯域である1〜6KHzのクロスを外すこと、もしくは一気に上まで一つのスピーカーユニットでカバーできるメリットがそのとき初めてわかったんですね。
ただやはり問題があって、真円でやってみると高域が伸びないんです。世界中の工場を回ってみて技術者と話もしました。発泡スチロールのコーンとか平面スピーカーなど、色々やってみました。そして最終的に偏心コーンに行き着いたんです。ただ、作るのが難しいし、全部素材も揃えるなんて誰もやってないんですよ。まあ、色々なリスクもありましたけど、最後発のメーカーなんで最新の技術が盛り込まれているというアイデンティティを作りたかったんです。

−御社のスピーカーはコーン紙やフレームが白いのが印象的ですが、この色を採用した特別な理由はあるんでしょうか?

 フレームは理由があるんですが、コーンはマイカの色なんです。マイカは乳白色で、混ぜていけば混ぜるほど白くなるんです。
あとは顔を見なくてもブランドを連想できるというイメージを確立したかったというのはありますね。

−御社の製品は自社ブランドとの組み合わせを推奨されていますよね。

 基本的には色付けをしないというか。僕らが一番追求しているのはたリニアリティなんですよ。
どこのメーカーでもそうだと思うんですけど、立ち上がり・立ち下がりといった過渡特性というのが一番なんですよね。
そのためにスピーカーは高能率になるし、スピーカーを止められる立ち下がりというのも重要になります。

−他社製品との組み合わせというのは考慮しませんでしたか?

 他社製品との比較はしました。できるだけスピーカーに色は付けていないので、正直にいえば組み合わせがどうこうといったものはないです。
例えばどんなデッキ・アンプを付けられても、そのデッキ・アンプ・ケーブルの音を出すだけですね(笑)
組み合わせが良い悪いといったものはないと思いますね。ただ、それが今までの業界では常識的に受け入れられない(苦笑)。
パイオニアさんも言っておられましたが「非常識を常識に変える」というのを僕らも挑戦しているところです。そのあたりは評論家の先生方にも一年かかってなんとなく理解されていただいてきたところで、そこは嬉しいなと思っています。

−コンフィデンス・アキュレート・リファレンスを開発するにあたって目標とされたような製品はあったんでしょうか。

 (きっぱりと)ないです。
よく「リファレンスのスピーカーは何ですか」って訊かれるんですよ。
でも、リファレンスのスピーカーがないから自分達で作ったんであって、結局何かの音をベースにすると、相対比較になるじゃないですか。だからそれはやめようと。
正直最初はスペックで追い込んでます。でも最後の微調整は聴感でやるしかないっていうことなんで。それはどこのメーカーでも一緒だと思います。
逆にいま市場にある製品のコピーを作ってもしょうがないですから。ましてやその音が基準になってしまうと、まったく新しいのって作れませんから。

−現在販売されているカーオーディオ製品で、ご自分で使ってみたい製品、気になる製品はありますか。

 いま次のモデルを作ってるので、これっていうのは…。
自分達の作っている製品が一番だと思っているから作れるんであって、そうでなかったら出せませんよね(笑)僕らはいまそれをやってるんです。
一歩二歩先に行かないと当然ユーザーさんにも飽きられますから。

−では最後に、中島社長にとって理想のカーオーディオとはどんなものなんでしょう?

 個人的に言えば僕の好きな音(笑)。理想が達成できてないからそれを追求している、といったところです。
簡単にいえば車に負荷をかけずにノンジャンルでどのボリュームでも良い音で聴けるというのが理想ですかね。単純ですけれど、そうとしか答えようがないですね。
ただ、世の中がハイファイといっている音作りと、僕らが考えているものが同じかどうかというのはありますが。
基本的にはみんな同じだと思うのですが、僕らはとにかくカーオーディオが好きなんですよ。オーディオが好きで車が好きで、車に乗っている時間が幸せなんですよね。その幸せな時間をもっと良くしたいと思っています。
ただ自分がそれを職業とした以上は、それを極めたいなあと。
みんなにとって一番幸せな時間にしたいと思うので、そのためには良い音を作っていくしかない。
この業界の中で流れを作っていくためには、僕らは最後発のメーカーなので、そこはこれから謙虚に実績や歴史を作っていこうと思っています。
10年後20年後にパイオニアさんに「強豪」と呼ばれるメーカーになりたいですね(笑)。
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